相手の顔が見えることが最大の魅力
サービス業は、物的成果物を生産しない点は共通ですが、具体的な業種は理美容から宿泊サービス、税務処理など様々ですが、基本的には消費者の顔が見えにくいメーカーや農業生産者と異なり、相手の顔が見える点が特徴です。
近年ホスピタリティが求められるサービス業界
東京オリンピックの招致の際に滝川クリステルさんが使った「おもてなし」という言葉が、サービス業界でよく使われるようになりました。
この言葉は何も新しい言葉ではなく、古くから日本にあった客をもてなすという意味です。
現在、これに近い意味でホスピタリティという言葉も使われるようになっています。
客をもてなすのみならず、その行為により客に感動を与えるというニュアンスです。
この言葉は語源から考えると、ラテン語、フランス語をとおして、現在の英語の病院(hospital)と共通点があります。
医療サービスも治療をするだけでなく治癒により患者の感動をもたらすと言ったことと共通しているのでしょう。
宿泊や飲食などのサービスに関わる事業は「ホスピタリティ産業」と呼ばれ、ホスピタリティがあって「満足感」を受けて、対価を払うという考え方です。
ホスピタリティとサービスは似て非なる言葉
サービス業で求められるホスピタリティはイコール、サービスというわけではありません。
サービスという言葉は召使を意味する「サーバント」と同義でいわば「主従関係」での「従」の立場に立ったお世話です。
対するホスピタリティは、もてなす側が行う行為で、客に対して主の立場で客に喜んでもらうことです。
ホスピタリティは、元々は対価を得て行う行為ではなく、相手に喜びや感動を与えることに価値を見出す行為でした。
しかしホスピタリティが価値を生むことに着目され、それ自体をビジネスに取り込む過程で徐々にサービスとの境界線がややあいまいになっています。
ホスピタリティの基本は「相手を思う」ことで、期待を上回る行為に客の感動があることが挙げられます。
これが満たされると客から感謝の気持ちが跳ね返り、それが事業者の利益の源泉となるとともにスタッフの感動とモチベーションアップに大きく影響するのです。
この客から頂ける感謝が、相手の顔が見えるサービス業で働く職員の大きな遣り甲斐になっているのです。
ホスピタリティが必用とされるホテル業界の職員
ホテル業界はこのような客を感動させるホスピタリティが必用とされる代表業種です。
あるホテルの客室係は客室に案内したり、客に頼まれた食事や毛布を届けたりした際、客室のドアを閉じた後、このホテルを利用してくれた感謝の意を示すためにドアに向かって丁寧に一礼する癖をつけています。
ある時ドアのスコープ越しにその姿を見つけた客が、その姿に感動して、そのホテルのリピーターになってくれました。
直接対面で丁寧な対応をして感謝されることももちろん嬉しいことですが、見えない所で行っていたホスピタリティに感動してくれたそのスタッフは、話を聞いてさぞ嬉しかったことでしょう。