次世代への継承を前提としない樹木葬
さくらなどの樹木植物や緑の多い庭園に石碑を置き、遺骨を埋める樹木葬が人気になっています。
形態はさまざまで、個人別または家族単位で樹木の下に埋葬する形態や、希望者を合葬するタイプもあります。
骨つぼのまま埋葬するタイプや遺骨を袋に移して葬るケースも見られます。
いずれにしても、樹木葬は従来型の家制度で引き継がれるお墓と違い、次の世代へ引き継がれないという点が特徴です。
樹木葬が人気となる社会背景
従来は家には菩提寺があり、そこにお墓を建てていたり、公的な墓苑等に墓を建てていたりして子孫代々に引き継がれる事が一般的でした。
しかし、近年の少子化や核家族化の進行に伴い、引き継ぐ子供がおらず、また、遠く離れた地方にある墓を守れず、荒れ放題になったり無縁墓地になったりするという社会問題が生じています。
樹木を墓標にする場合は建墓費用が不要で、維持管理費用が掛かりません。
一代限りであるため子供に負担をかける事もなく、子孫に負担をかけたくない方や後継ぎがいない方に好評なのです。
国内での第一号の樹木葬墓地は、平成11年に作られた岩手県にあるお寺が造ったものだと言われます。
それが話題となり人気を呼び、折からの終活ブームにも乗って、各地に広がっていきました。
大きな話題を呼んだ横浜市運営の樹木葬墓地では、申込区分により抽選倍率が30倍以上に達したことがありました。
コストが安くつく樹木葬のメリット
これまで主流だったお墓にかかる費用はエリアや広さや運営主体により異なりますが、新規に土地分譲を受けて建墓すると100~300万円が相場で、平均すると約210万円程度です。
樹木葬の場合もエリアや形態により費用はさまざまですが、1人で利用する場合、10~60万円程度のケースが多いです。
お寺の境内の中に埋葬される場合であっても宗派は限定されず、檀家にならないため管理費は発生しない、あるいは実際の埋葬まで少額とされる事が多いです。
そのほかにも自然の中で安らかに眠りたいと思う方には、最適と言えるでしょう。
子供の負担と供養したい気持ち
樹木葬の申込み者の多くは、元気なうちに生前予約する方が多いのですが、後継ぎがいない方だけでなく、お墓のことで子供に負担をかけたくないとの思いで選択した方が多くいます。
注意したいのは、樹木葬ほか永代供養などでは、個人別に供養する期間を20年あるいは33年等期限の定めが設けられる場合がある事です。
期限が経過すれば、合葬墓などに合祀され、その場所は次の分譲に回されてしまいます。
この点は子孫が引き継いで管理料を払い続ける代わりに、その間は継続して使える従来形式のお墓とは扱いが大きく異なります。
お墓の役割は遺骨を納める設備の側面と、故人を供養するモニュメントという2つの側面があるのですが、樹木葬墓の場合はモニュメントの側面が弱い事に注意が必要です。