地震国である日本に住む我々にとって、住宅の耐震性と安全性は何よりも優先すべき要因です。
家族や大切な人々を守るために、しっかりとした基準で一戸建ての構造を評価し、最適な選択を行うことが不可欠です。
木造、RC造、S造といった異なる構造の一戸建てが存在し、それぞれに特有の利点と制約があります。
木造一戸建ての耐震性と弱点:どんな家族に向いている?
木造の一戸建ては、その軽さと柔軟性から日本国内で広く使われています。
低コストで建築でき、設計の自由度が魅力です。デメリットとして防音性や耐震性が他の構造に比べて劣る傾向にあります。
しかし、建築基準法の新耐震基準では、住宅の構造種別や工法に関係なく、震度6強~7に達する大地震でも倒壊・崩壊するおそれのない建築物とするように定められました。
よって、木造でも十分な耐震性を備えることができます。
RC造一戸建ての耐震性:鉄筋コンクリートの安定性を解説
RC造の一戸建ては、鉄筋コンクリートを主要な構造材として使用します。
鉄筋コンクリートはその強靭性と柔軟性から、地震に対して高い耐震性を有しています。
コンクリートの強度と鉄筋の補強により、揺れに対しても安定性を維持することが可能です。
これにより、家族の安全を確保するための一つの選択肢としてRC造の一戸建てが注目されています。
また、自由なデザインの建物が実現できることも、メリットの一つです。費用は掛かりますが、曲線的な形状の壁を作ることもできます。
ただし、建築コストが高めになることや、木造に比べて工事期間が長くなる点には留意が必要です。
S造一戸建ての安全性:鋼構造の利点と注意点
S造の一戸建ては鋼骨構造を採用しており、その強度と耐久性から地震や台風の揺れに強いことがメリットです。
RC造と比べて、コストを抑えて建設できます。工期も短く済むので、低コストで建造できるのです。
また、柱や梁がスリムになるため、広々とした空間を実現することができます。
ただし、鋼材は熱を通しやすいため、冬や暖房の熱が逃げやすく結露の原因にもなります。
また、防音性にも課題があるため、家族のニーズと合わせて検討が必要です。
木造、RC造、S造それぞれにメリット・デメリットがあります。
自分で建てる場合、予算、間取り、土地の広さなどさまざまなことを加味したうえで選ぶといいでしょう。
日本では地震対策も重要なポイントです。耐震基準についても知っておきましょう。
耐震基準について
日本の建築基準法は、地震による被害を最小限に抑えるための基準を定めています。
1950年に制定された建築基準法の耐震基準は1971年、1981年、2000年に大きな改正が行われました。
このうち1981年の建築基準法の改正によって、1981年5月31日以前に確認申請を受けた建物は旧耐震、1981年6月1日以降の確認申請を受けた建物は新耐震と呼ばれます。
旧耐震では震度5程度の地震で大きな損傷を受けないことが基準でしたが、新耐震では震度5程度の中規模の地震ではひび割れ程度、震度6程度の大規模な地震で建物の倒壊、損傷を受けないという基準になりました。
1995年の阪神・淡路大震災では新耐震の建物は損傷が少なかったとのことです。
なお、2000年の建築基準法の改正では阪神・淡路大震災で多くの木造住宅が倒壊したことから、木造住宅の耐震基準が厳しくなりました。
しかし、RC造の耐震基準は1981年の新耐震と大きく変わっていません。
耐震基準に適合するような設計や工事が行われるため、住宅は基本的に一定の耐震性を備えています。
さらに高い耐震性を追求することも可能です。
住宅の耐震基準以外にも確認したいポイントについて紹介します。
耐震等級
耐震等級とは、地震に対する建物の耐久力を示す基準で3段階にわけられています。
新耐震基準を見たいしてれば耐震等級1、長期優良住宅として認められれば耐震等級2が目安です。
耐震等級3は2016年に発生した熊本地震で被害なしという結果がでており、非常に高い耐震性を誇ります。
しかし、認定されるには10~20万円程度の費用がかかるため、あえて認定を受けないケースもあるようです。
なお、耐震等級1を1とすれば、耐震等級2は1.25倍、耐震等級3は1.5倍の耐震性となっています。
地盤の強さ
地盤が弱いエリアの場合、地震が発生すると地盤沈下により家が傾いたり、基礎に亀裂が入ったりすることがありえます。
そのため、地盤の強さも確認するようにしましょう。
ハザードマップや地盤調査報告書などで確認すると安心です。
地盤改良工事について
地盤を強くするために地盤改良という方法があります。
柱状改良工法
地面にコンクリートの柱を注入し、建物を支える工法です。一般住宅から集合住宅、工場など幅広く採用されおり、実績も多くあります。
地盤改良工事の中でも工事費用が安く済む傾向にあります。
表層改良工法
地盤にセメントを使用して地表周辺を固める工法です。地盤の軟弱な部分が地表から2mまでの浅い場合に用いられます。
表層部の軟弱地盤部分を掘削し、固化剤を土に混ぜて締固めて強度を高めます。
小口径鋼管杭工法
地面に鋼管で地中から建物を支える地盤改良工事のことです。柱状改良工法と仕組みは同じで、杭がコンクリ杭か鋼管かの違いです。
工事にかかる日数も短縮でき、小型の重機で施行しやすいため狭小な土地にも適しています。
耐震基準を確認するには
耐震基準が旧耐震なのか、新耐震なのか確認するには、建築確認日で判断できます。これは建物の施行日や築年数ではなく、建築確認申請が受理された日のことです。
建築確認申請とは着工前に役所に書類を出すことで、建築物を建てる際、必ず法令に従っているかどうかを調査する必要があるため、建築確認日が1981年6月1日以降であれば新耐震と判断できます。
また、建物が建築基準法の基準を満たしていることを証明する耐震基準証明書があります。
耐震基準証明書は建築士や指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関に依頼し、耐震診断を受け取得するものです。
耐震診断と補強工事:中古住宅の安全性向上策
日本では建築基準法によって一定の耐震性能が担保されています。
しかし、旧耐震の中古住宅がNGというわけではありません。
修繕や耐震改修により、住宅の性能を上げる方法があります。
耐震診断を行い、問題点を特定した後に補強工事を施すことで、地震時の安全性を向上させることができます。
耐震補強工事とは、土台や筋交い、柱などの接合部に耐震金物を取り付け、建物の強度を補強し耐震性を向上させる工事のことです。
特に、古い木造住宅などは耐震性に難がある場合があり、その場合は補強工事を検討することが重要です。
ただし、費用や工期を考慮に入れ、進める必要があります。
耐震・制震・免震の違い
地震に対する構造には、建物を強くする耐震、建物と地盤を切り離して揺れを伝えにくくする免震、ダンパーなどを使って揺れを吸収する制震があります。
耐震構造は頑丈な柱・梁で地震の揺れで倒壊しない強度の構造のことで、日本では多くの建物は耐震構造が採用されています。
制震構造と免震構造は、地震の揺れを建物に伝わらない構造です。
それぞれ、メリット・デメリットがあるため、住宅を購入する際はどの地震対策が備わっているのか確認しましょう。
中古住宅購入による住宅ローンと耐震工事の組み合わせ
中古住宅購入のため、住宅ローンを組む際に、耐震工事を計画に組み込むことは、長期的な視点から見て賢い投資と言えます。
100万円超の耐震改修工事をして10年超のローンを組んだ場合、通常の住宅ローン控除を受けられるほか、所得税の制度として所定の改修費用等の10%の税額控除する制度があります。
また、固定資産税の減税措置も受けられます。
敷地調査・地盤調査について
住宅を建てる場合、敷地調査や地盤調査が必要になるケースがあります。
敷地調査とは
測量を行い敷地の正確な面積や形状を調べる調査です。隣地との境界杭の有無や、隣地や道路との高低差などを確認します。
また、敷地内に上下水道、ガス、電気の配管があるかも調査し、新たに引き込んだり、交換したりする場合、別途工事費費用が発生するため留意しておきたいところです。
一般的な敷地調査では1件につき5~8万円ほどかかりますが、ハウスメーカーによっては無料で行うケースもあります。
地盤調査とは
住宅を建てる土地の強度を測るための調査です。建設する住宅の重量に耐えられるか、沈下に耐えられるかを確認します。
重さに耐えられないような地盤に住宅を建ててしまうと、住宅が傾いたり、沈んだりする恐れがあるため、必要な調査です。
費用は5~10万円程度で、調査自体も半日から1日で調査できます。
家族構成と耐震性
一戸建てを選ぶ際には、家族構成や将来の変化を考慮することが不可欠です。
子供の成長や家族の増減によって、住まいの使い方が変わることを見越して設計を行うことが重要です。
また、将来のリフォームや増築の可能性を考えて、柔軟なプランを用意することも大切です。
耐震性を持ちつつ、家族全員が快適に過ごせる住環境を実現するために、将来を見据えた選択をすることをおすすめします。
安全性と快適性の両立
住宅を選ぶ際には、安全性だけでなく快適な生活も求められます。
特に、断熱性能は居住空間の快適さに直結します。しかし、断熱材を優先するあまり、耐震性を犠牲にすることは避けるべきです。
安全性と快適性のバランスを取るためには、建築家や設計士とのコミュニケーションが重要です。
耐震性を損なわずに、快適な住環境を実現するためには、専門家のアドバイスを活用しましょう。